ベンチコーチで最も注意していることをお話しします。
宇田は、小学生とはいえ高い技術と最新の技術を使いこなせるレベルにいます。ベンチの役目として、宇田に普段の技術を十分に発揮できるようにすることが大事になります。そこで、特に注意しているのは【卓球台との距離】の分析です。全日本カデット13歳以下で優勝した時の宇田の強さは抜群でした。準々決勝から決勝までの試合は、ベンチで負ける気がしませんでした。
実は、4回戦の近藤蓮選手(明豊中学・大分)との一戦では負けを覚悟しました。近藤選手は、ミスは少ないものの甘いレシーブで、宇田はフォアハンドで三球目を難なく強打しました。しかし、練習量の豊富な学校の選手だけにブロックが入ってきます。自信を持って打った三球目攻撃を返された宇田は、バックハンドが詰まってしまいミスを連発してしまいました。更に踏み込んでフルスイングでフォア強打するたびに、ブロックがバックに返ってきてミスをしてしまうのです。
卓球台との距離が確実に近くなり過ぎていました。ゲームカウント1-2でリードを許し、4ゲーム目もリードされたところでタイムアウトを取りました。「台との距離を取れ、もっと台から離れて後ろでプレーしろ」と言いたいところでしたが、強いとはいえ小学生に、負けている状況で下がってプレーするように言うのは、危険であると感じました。私自身、かなり焦っていましたが・・・
「バックサイドから出しているサービスをミドルから出すように」
ミドルからサービスを出すと、卓球台から少しだけ距離を取るようになり、バックハンドの振り切れるスペースを自然に作ることが出来ます。両ハンドを得意とする宇田は、そこから見違えるようにバランスの良い両ハンド攻撃で圧倒して逆転勝ちしました。サービスを出す位置を変えることは、相手を翻弄するだけでなく、自身のプレーポジションを整えることに繋がります。「今のその距離、その位置がいいぞ!」勝ちの勢いにのる常套句です。
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