2017-2018シーズン、開幕から数試合経過しビッククラブとの試合を2対3の僅差で負けた試合後、対戦相手のコーチからアドバイスをもらいました。
「若い選手だけだけど良いチームだね。ファイトもあるしチームスピリットもある。年間を通して1〜2試合は勝てると思うよ」
「おいおい!舐めんなよ!1〜2試合?」
心の中で叫びました。火がつきました。
戦術ビデオを作り、ベンチで大声を出しまくりました。が、自分の気持ちと選手の気持ちの空回りが続き、「いい勝負」はできるものの「勝つ」までには至らない試合が続きます。「出口の見えないトンネル」のような恐怖感を覚えたのを思い出します。「シーズン前の予想通り1勝もできないでシーズンが終わってしまうのか..やっぱり1部に昇格しないで2部リーグで戦っていた方が良かったのだろうか」葛藤が続きました。
チームを救ってくれたのは10月の試合にスポット参戦してくれた平屋広大コーチ(シェークハンズ)でした。日本国内の試合にも全く出ていない平屋コーチですが、たったこの1試合のために自己節制しながら調整をし、試合では最後までボールを必死に追いかけて値千金の一勝をあげてくれました。この試合にチームの若い選手たちが何かを感じたのだと思います。チーム初の1部リーグでの勝利をきっかけに、選手たちは「勢い」を「勝ち」に結びつけられるようになってきました。
チームの立役者となったのは3番手登録だったダルコ・ヨギッチ選手(スロベニア・19歳)。シーズン当初ダルコ選手は3番手で登録。しかしキリアン選手がアーミーキャンプのため十分な練習を確保できなかったのと本人が懇願したためキリアン選手を3番に、ダルコ選手を2番手としました。そうこうしているうちにダルコ選手はヨーロッパ選手権でオプチョロフ選手にも勝利するなど、才能が一気に開花し、とうとうクニックスホーフェンの一番手として前半戦を9勝5敗で折り返しました。若くてモチベーションの高い選手たちを「世界トップに押し上げる」私たちのクラブの目的を見事に実現してくれました。及川選手も1部の試合にどんどん順応し、世界ランキングトップ30位以内の選手何人にも勝利し、ITTFスロベニアオープンで優勝して大きな成果をあげはじめました。
チームは5勝13敗の成績でシーズンを終えました。たった5勝かもしれませんがトップを走るデュッセルドルフ、前半戦を2位で首位を追うミュールハオゼンにも勝利しました。その日はクニックホーフェンの町中が大騒ぎでした。
一方で13試合も負けました。こんなに負けたのは指導者人生で初めてです。10チーム中9位は妥当な成績かもしれませんが、やっぱり悔しいです。
毎日指導しているジュニア選手の第2チームは北バイエルン州リーグで優勝し、来シーズンはドイツ全体の5部リーグ(オーバーリーガ)に昇格できました。残念だったのはジュニア選手の一人が大きな怪我をしプレーできなくなってしまったことでした。また来シーズンから大学への進学でクニックスホーフェンから離れたところに住む選手も出てきます。他のチームで練習をしてチームと合流して試合に出る予定です。他チームから移籍してくる長男と同年代の選手も加わるとのことで、こちらもメンバー間のレギュラー争いも熾烈になるかもしれません。
来シーズンはダルコ選手が移籍し、新しい選手が入ってきて一緒に戦います。一年を戦い、リーグの雰囲気には慣れました。ヘッドコーチである自分が「本当の自信」を纏えば選手が勝てるのだとも分かりました。
日本人として初めてのドイツ・ブンデスリーグ監督への挑戦の1年目が終了しました。来シーズンもフルファイトで戦います。
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