森薗美咲選手が約20日間のドイツ生活を終え帰国しました。
誰が名付けたのか【卓球界の姉御】。青森山田時代から卓球に取り組む姿勢は群を抜いていましたが、今回数年ぶりに一緒に練習をしても、変わらぬ心の強さには、教え子というよりも一人のトップアスリートとして尊敬の念すら抱きます。
「スーパーはあっちにあるからね」「あっ今朝ランニングしてたら見つけましたよ」
「お昼パン買いたいならあっちだよ」「あっ練習後にランニングしてたら見つけましたよ。というより、三日でクニックスホーフェンはほとんどわかるようになりました笑」
もちろん練習の前後に自主的にランニングをしているからです。
今回は時々キリアン選手やマリウス選手(冒頭の写真のコーチ)と練習をしましたが、他の時間は私との多球練習やジュニア選手達を相手にしての練習でした。ただ世界レベルの美咲のボールをミスなくコントロールしたり、速いピッチの高速ラリーに対応できる選手などいません。典型的なのが長男のアキト。何度も練習相手に指名してもらいながらもミスだらけ。ただ、そこで相手に甘い声をかけるのではなく容赦なく厳しい要求をできるのが卓球界の姉御たる所以です。
「集中力がなかったら板垣先生に言って家に帰って休んでいいよ。私無駄な時間は使いたくないから」「ミスはしょうがないのよ。ただ、必死にボールに食らいつく気持ちが大切。青森山田では格上の選手と練習できるチャンスがあったらコートに返す事すら大変だったけど、そこで必死についていく選手か諦める選手かで伸びるか伸びないか決まるのよ。アキトにそれが感じられるならこっちは大丈夫。でもミスしても平気な顔しているのなら私やりたくないし」
コーチとしても父親としても何百回も伝えている【卓球で最も大切なこと】長男の心の奥まで響かないのが指導力不足…今回世界レベルの美咲が真剣な目つきで伝えてくれた言葉がアキトの心の奥にあるスイッチを「ON」にしてくれました。目つきを変えて全くついていけないボールにも必死に手を出し、少しずつですが「1球多く」コートに返せるようになってきました。そしてこの経験が先日の全ドイツ団体優勝に大きく影響したのは言うまでもありません。決勝戦の第4ゲーム9対9の苦しい場面で「抜かれた!」と思ったボールに必死に飛びつきポイントをあげ、動きの速さも格段に上がっていました。
アキトの単複14戦全勝は美咲のお陰でした。
「パパ、毎日美咲ちゃんの厳しいボールで練習させてもらったから試合の方が少し楽に感じたよ。美咲ちゃんに本当に大切なことを教えてもらった。美咲ちゃんに本当にありがとうと言いたい」
クラブの子供達には足の動き方まで丁寧親切に教えてくれました。
「板垣先生、卓球の他にどうしても一つお願いがあります。行きたい場所があるんです。連れて行ってもらえますか?」
ちょうどコハルとカズトがミュンヘンで試合があったので迎えに行ったついでに
チェコの美しい街チェスキークルムロフを通り、チェコを突っ切って…
目的地に到着。アウシュビッツ….
どうしても自分の目で一度確かめたかったのだそうです。私も子供達がドイツの地元学校で学んでいるので、いつかは連れて行きたかった場所でした。
復路はドイツとポーランドの国境の街ゲルリッツを通って帰ってきました。走行距離は2,500キロ。
以前、彼女についてのブログを書いた時、彼女には勢いと爆発力があり【突撃娘】と名付けました。それから数年たち苦労を重ね勝負の厳しさに常に立ち向かい、今もなお変わらない強い信念を持ちながらも周りに気を配る、素敵な【卓球界の姉御】になっていました。
「私も美咲姉ちゃんみたいな選手になりたいな!」チビ美咲(コハル)です!
自分の教え子と言ってしまっては私の方が恥ずかしい…教え子たちに教えられることばかりです。
毎日の夕食の後、子供達が就寝し私もベットに入っているとリビングルームから美咲と妻の笑い声や「そ〜っすよねぇ!」という美咲の声が。毎晩寝る前の【女子会】が楽しみだったのだそうです!私が入ると確実に二人のツマミにされるので止めておきました..
最後の朝ポツンと「すっげぇ居心地良かったっす!」と言ってくれた一言に救われました。
青森山田の前総監督である吉田安夫先生は全国から集まってきた才能ある子供たちを毎日のように教育していました。
【才能はみんなある。ただ心が一流にならなければ決して超一流選手にはなれない】と。
2019年の初夏にシェークハンズ2号店を訪れてくれた【卓球界の姉御】はジュニアチームの全ドイツ制覇に大きく貢献してくれた、間違いなく超一流の人物です。
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