吉田 雅己選手
(青森山田中学~青森山田高等学校~愛知工業大学)
*吉田選手の吉の字は、正しくは下が長い「土冠」ですが、文字化けしてしまうので、「吉」で表記します。ご了承ください。
(以下、雅己)
個人対個人で勝敗を争う卓球でも団体戦には魅力があります。チーム対チーム、国家対国家、そのプライドを賭けてベンチからスタンドから声援を送り、選手は心技体知の最高のパフォーマンスを発揮しようとプレーする。その姿に感動というドラマが生まれた場面を幾度となく経験してきました。
ドイツ・ブンデスリーグでは、「個人戦では爆発的な力を発揮しにくいが、団体戦の後半、特にラストでは絶対に勝ってくれる、ラストはお前に任せた!」という選手に敬意を称し「クラッチプレーヤー」と呼ぶそうです。誰もが緊張する場面でもチームを勝利に導いてくれる選手。人間的にも信頼できる選手という証だと思います。
天才・丹羽孝希(現・明治大学3年)、パワー溢れる町飛鳥(現・明治大学3年)と同年代に生まれ、小学校6年生の時に全日本カデット13歳以下シングルスで優勝しましたが、派手なプレーが少ない雅己。でも、やっぱり「人と違う」何かを持っている選手でした。
雅己が青森山田中学校に入学することが決まり、札幌丸山クラブで雅己の指導に関わっていた長島さんと話す機会がありました。
「雅己はね。丹羽、町から1年遅れるかもしれないよ。でも、こんな気持ちのしっかりした選手は見たことがないよ。雅己は人と違う何かを持っていると思う。必ず追いつき、大きく育つと思うよ。」
人と違う何かを持っている。それがテクニックであろうとメンタルであろうと、この勝負の世界で大成するために最も必要な要素です。「また楽しみな選手が入学してくれるな。」心の中で思いました。
まだ体も小さく、大きなプレーもできない雅己。でも、13歳にして、1cmだけ台から出る相手のSVを正確にドライブRVする目の良さや、相手が回り込もうとするとストレートをつくコース取り。そして何よりも「何事にも真剣に」取り組むことができる人間性。「必ずチャンスは来る。必ずチャンスを作ってあげよう。」その勝負を賭ける時期をどこに持っていくか?これが私への宿題でした。
中学3年生の全国中学大会。同級生の丹羽孝希選手が国際大会への出場のため出場しなかったこの大会、町飛鳥、吉田雅己、森薗政崇が男子シングルスでの優勝候補に挙げられました。この大会の優勝者は10月に東京で行われる世界カデット選手権の代表に選ばれる可能性が高い….。その情報を掴み選手に伝えました。雅己は準決勝で町を、決勝で森薗を破り見事に優勝し、世界カデット選手権に出場しました。今まで丹羽、町の影に隠れていた雅己が、やっと日の丸を付けられる。また一つ楽しみが増えました。そして本大会では、当時U-18ランキング世界1位の中国選手を団体戦で破り、一気に注目度を上げました。国内的にも国際的にも……。
でももう一勝負必要だ。今の雅己ならもう一勝負できる!「機は熟した。」
(後編に続く)
* なお、「インターハイ編」は現在、鋭意執筆中です!後日掲載します。お楽しみに!
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