どうしても獲りたかった三冠王。ダブルスの敗退は悔やんでも悔やみきれないものでした。全日本選手権男子ダブルス2連勝、前年度インターハイダブルス優勝の三部と、ジュニアチャンピオン及川のダブルスは強力に見えますが、最初はバラバラでした。「右・右のダブルスは難しい…。」
それでも中国トップペアー、韓国のペアーは右右でもしっかり勝ちあがってきます。「突破口はあるはず。まだまだ自分の勉強不足。」ジャパンオープンのダブルスを自分の携帯で撮影したり、世界のトップペアーの動画を見たりと戦い方の研究に追われる毎日を過ごしました。
及川と三部の6月からのスケジュールはハードなものでした。6月初旬のインターハイ青森県予選終了後にナショナルチーム合宿に行き、合宿後は神戸に移動。ジャパンオープン。ジャパンオープンから韓国オープンに出場。7月20日からはアジアジュニア選手権。
「今年のインターハイはダブルスが勝負。コートに立っている半分はダブルスという種目だと思ってくれ。三冠王が獲れるかどうかはダブルス次第だよ。」二人には伝えていました。
ただ、試合続きのこのスケジュールの中でダブルスの練習時間すらとれない。同じ練習相手とばかりダブルスのゲーム練習をしても、どこを攻められるのか、どこで点数を取るのかが見えてこない。ジャパンオープンと日程が重なり東北大会にも出場できないことがわかっていた中、7月上旬の試合の合間に中国・南京市で合宿を行うことを決断しました。
南京は邱建新さん(以下、邱さん)の出身地。邱さんにも同行したいただき、質の高い合宿を行うことができました。合宿のテーマは「ダブルスのゲーム練習とダブルスのシステム練習。」1日のゲーム練習の半分はダブルスをしていただき、二人の長所と短所を確認。チキータ外し対策やチキータを外すパターンの確認。そして動きを入れた多球練習を約60分。右右でのダブルスのシステムを邱さんに指導していただき連日行いました。
合宿後半、ようやく噛み合ってきたダブルス。右右でもラリー中にぶつからない考え方も二人に浸透してきました。「これなら行ける!」
インターハイが始まり、学校対抗準々決勝でダブルスが敗退してしまったものの、準決勝では完勝。決勝でも「自分たちのチキータに自信を持って!」
壮絶なラリー戦を制し、値千金となる1点を挙げてくれました。
個人戦ダブルスの敗退は、振り返れば「精神面のわずかな隙を修正できなかった事と戦術ミス」でした。平成26年度・甲府インターハイ。坪井・三部組がダブルスで優勝したのは大会3日目。翌4日目には学校対抗決勝戦を控えていました。「ダブルス優勝は嬉しいが、安心する時間すらない。明日勝負!」
今年度からスケジュールが変わったインターハイは3日目に学校対抗の決勝が行われ、4日目にダブルスの決勝。個人戦のダブルスには、学校対抗に出場していない中国留学生も出場してきます。「団体戦のダブルスよりも強いはず。」しかし、学校対抗優勝後の精神面の隙、ダブルスのピークを4日目に合わせることができなかったのは監督である私の責任です。
(写真提供:卓球王国)
また、ダブルス準決勝で敗退した後、邱さんからチャットが入っていました。「 I saw this semi-final on Internet LIVE. In the beginning of this Game, tactics was not so good. At first you should better try……」細かい戦術的なことはここでは紹介できませんが…..。
残すは大会最終日のみ。25年北九州インターハイ、26年甲府インターハイ、この二つの大会で学んだこと。それは「最後にこの体育館を笑って帰ることができるのは、シングルスで優勝した選手のチームのみ。
大会中盤の学校対抗とダブルス優勝チームではない。明日は戦術が勝負。戦術・戦術。」
A4版の白紙に「戦術」と大きく書きTVの横に置いて、就寝。
「笑顔で体育館を出たい。いや、出なければならない。」
(次回は、最終回⑪男子シングルス優勝の駆け引きと「おめ」に続きます。)
プレミアムサービスで板垣孝司監督の卓球指導動画が見放題