第8節はアウェーでのフルダ戦でした。フルダはクニックスホーフェンから近いので、毎年ファンバスでフルダのクリスマスマーケットに行ってから、サポーターの方々が応援に来てくれます。
コハルが、日本から宇田選手の取材に来てくださった高樹さんを案内しながらクリスマスマーケットに行ってきました。
試合前日にデュッセルドルフで練習していたキリアンが怪我をし、試合に出場できるか微妙になってしまいました。カットマンキラーのキリアンがフルダ戦に出場できないのは痛いです。キリアンが怪我をしたことは当然ながら相手側にも情報が入っていると思うので、フィルス(ドイツ/WR20位)がエースとして出場してくる可能性がある。アルーナ(ナイジェリア/WR15位)カッシン(フラン/WR88位)ファン(ドイツ/WR93位)も勿論強い。
クニックスホーフェンとしては宇田選手をカッシンに当てたい。バースティーはフィルスには80%勝っているけどフルダの会場で「だけ」は勝っていない..。長い試合を予想し、ダブルスだけには出場できると志願したキリアンと宇田のペアーなら勝てる。
1番バースティー
2番宇田
3番フィリップ でオーダー交換。
フルダは
1番フィルス
2番ファン
3番カッシン。前半戦でフルダを退団するアルーナはベンチ。
17:00試合スタート。
1番 宇田 vs フィルス。Lin(台北)がフィルスに勝った試合をイメージし、巻き込みサーブでフィルスの粒高でのストップレシーブを防ぎながら第1ゲームを奪った宇田ですが、百戦錬磨のフィルスはレシーブを工夫し、宇田の強烈な3球目攻撃をさせないようにすぐに戦術転換。長いラリーでカットに追い込みたい宇田ですがバックサーブからの強烈な3球目攻撃などで、なかなかペースを掴ませてくれません。最終ゲームのスタートで宇田が無理に打ちに行き点数を離されてしまい2対3での敗退。
2番 バースティー vs ファン。ブンデスリーグで何度も対戦しているファンに対し、第3ゲームこそ序盤に離され失ってしまいましたが、すぐに修正していくバースティーは流石です。3対1で勝利!ただ何度もフォアサイドを切るサーブに対するドライブレシーブミスを繰り返し、試合後に「コージ!何で俺はサイドに来るサーブがわかっているのにミスを繰り返したんだ?教えてくれ!」と少し興奮気味に聞いてきたバースティーにはビックリしました。「ネットミスでもオーバーミスでもない、つまりラケットに当たっていないミスだよ。回転をかけようとして薄く捉えすぎているかも。もっと分厚く捉えれば良いと思う」と本人に伝えました。
3番 フィリップ vs カッシン。前回の対戦では2対3とあと一歩まで追い詰めていたフィリップでしたが今日は完敗。とにかく連打にミスのでないカッシンに好きなように打ち込まれてしまい0対3で敗退。
4番 バースティー vs フィルス。何度も対戦している両選手の対戦は「前回はこうやったから..」といアドバイスだけでは全く無意味で「今日のフィルス」を見なければなりません。コートに突き刺さるような低い弾道のバックカット。思わず「嘘だろ!」と声を出してしまう反転してのバックドライブ。バースティーが7本ブロックしたのに、全部反転しながら裏ソフトでの連続ドライブ。
ゲームカウント1対2になり、第4ゲームは常に2点差をつけられ、1点とり、次の1点が取れず2点差をつけられたままゲームが進みました。「この流れを止めたい。タイムとるか?」と考えましたがタイムを取れないまま7対10とマッチポイントを取られ、あと1点で試合終了.. ここでバースティーが自分でタイムを取りベンチに戻ってきました。「コージ、何かアドバイスはないか?」と聞くバースティーに「まだ48秒も時間があるよ。まずは水を飲んで、時間をギリギリまで使って焦らずやろう。戦術は最初と同じで大丈夫。低いループをフォアに落としてフォアサイドでフィルスを前後に動かしてチャンスを作ろう」
ここからバースティーが脅威の連続ポイントを取り、第4ゲームを奪い返し、最終ゲームは完全にバースティーが支配!3対2での逆転勝利!
5番はキリアン・宇田 vs カッシン・ファン。
「戦術はキリアンにも伝えてある。台上で勝負。ただ一番大切なことはキリアンと相談しながら試合を進めること。ポイントを取ったらベンチよりもキリアンと目を合わせて自分たちで試合を作ること。英語が速くて聞き取れなかったら、もう一回言って!と聞き直せばいい。」
第1ゲームを取り、第2ゲーム大量リードから7対6に追い上げられた場面でタイムアウト。ここは戦術の確認。ここからポイントを連取しゲームカウント2対0とリード。第3ゲームこそ取られたものの、第4ゲームは中盤から幸矢(宇田選手)の高速チキータがコートに突き刺さり勝負あり!3対1での勝利!
【 ハイライト動画です 】
取材に来てくださっていた高樹さんが私に教えてくれました。
「宇田選手は1番での敗戦のあと、ベンチの後列に座って応援はしていたけど一度も立ち上がって応援はしていなかっんです。それが、42歳のバースティーの逆転勝利の試合は一本ずつ立ち上がり、大声で応援していましたよ。そしてバースティーが繋いでくれたラストのダブルスでは、顔つきが違っていたというより気持ちが吹っ切れていたように見えました。ダブルスで勝ってチームの勝利を決めた瞬間、キリアンと抱き合う姿を見ましたが、やっとチームの本当の意味での一員になったように感じました。それまでは単なる助っ人のように見えていたんですけどね」と。
実は試合前に幸矢とこんな話としました。
「ドイツに来て海外の選手と練習をし、ブンデスリーグに出場する。そして良い経験をした、と選手は言うけど、僕はそうは思わない。海外の選手との練習は望めば色んな方法があり、難しいことではなくなってきた。でも僕が思うドイツに来て脅威的な伸びを見せたのは間違い無く及川。及川は語学を学んで自分から選手に声をかけて色々な情報を選手から学んだ。だから、海外の選手が何を考えているのか、そして海外の選手に対する不気味さというのがなくなった。例えば試合会場で近くの外国人選手がテーブルを囲って食事をしているとき、卓球の話になることはよくある。その時耳をさりげなく耳を傾けると面白い情報が入ってくることもある。またベンチコーチとのやりとりで疑問に思ったら聞き返すことも大事である。語学で困っている幸矢を助けてあげることはいくらでもできるけど、先に僕が手を差し伸べてしまうと幸矢の伸びしろを積んでしまう。もし、デュッセルドルフの食堂で誰かが昼食を食べている時に、自分から卓球の相談をしてみたら?そしたら「もう休憩しようぜ」と自分から言うまでずっと教えてくれると思うよ。そうやって自分からコミュニュケーションを取れるようになったらブンデスリーグも必ず勝てるようになるよ」と。
将来、幸矢が大きく羽ばたいた時に「あの試合が僕のターニングポイントでした」となる1日になるかもしれない..
そんな予感をさせた一日でした。
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