2022-2023シーズンの前半戦は残り2試合。下位のマインツ戦とほぼ同じ勝率のムールハオゼン戦を残すのみとなりました。
今シーズンのブンデスリーグは国際情勢の影響もあり、私がドイツに来てから最もハイレベルだと感じています。首位を走るデュッセルドルフは勿論強いですが、最下位のマインツも村松選手が個人勝率1位をキープしており、本当に全ての試合が激戦になっています。
第11節はそのマインツとのホームゲームでした。オーダーは、カットに滅法強いキリアンを2番に出し村松選手と勝負させたい。宇田選手は3番で左のプチンティカ(モルドバ/WR319位)と当てたい。2番に出てくるであろうムラデノビッチ(ルクセンブルグ/WR260位)はアンチスピンラバーを使い今シーズン、ゴジー選手(フランス/WR32位)やオマー選手(エジプト/WR26位)など名立たる選手に勝利している。ムラデノビッチには経験豊富なバスティーを当てたい。マインツは村松の2ポイントとムラデノビッチの1ポイントが勝つパターンです。なんとかダブルスまで持ち込めばクニックスホーフェンの勝利は近くなるのでムラデノビッチには「ハマらず」に確実に勝ちたい。
オーダー交換が終わり、
1番 バスティー vs プチンティカ
2番 キリアン vs 村松
3番 宇田 vs ムラデノビッチ
4番 バスティー vs 村松
オーダーはちょっと外したものの、2番と3番の試合のどっちかが勝てばチームは負けないはず。
13:00試合開始。
1番 バスティー vs プチンティカ(モルドバ/WR319位)。昨シーズン2部リーグで圧倒的な勝率を稼いだプチンティカに対し、終始安定した試合運びのバースティーが3対0で勝利。
2番 キリアン vs 村松。序盤、村松選手に攻撃をさせずカットに追い込みぶち抜いたキリアンが2対0とリード。しかし村松はここから横回転ツッツキレシーブやサーブ3球目攻撃を混ぜ試合を立て直してきます。そして反転しての一撃バックドライブは見えない程速い弾道でコートに突き刺さります。キリアンのペースを崩し始めた村松選手が息を吹き返し、最終ゲーム10対7とリード。キリアンが粘り10対9。ここで村松選手がサーブミス!10対10と追いつき「行ったか!」と一瞬思いましたが、キリアンが痛恨の打ちミス。最終ゲームジュースで村松選手の勝利。
3番 宇田 vs ムラデノビッチ。予想以上にブチ切れているループに対するアンチでのブロックに戸惑う宇田。しかし、何とか2対0とリード。「ハマらずに勝ちきってくれ」と心で思っていましたが、ムラデノビッチが徐々に宇田の戦術を読み始め痛恨の逆転負け。
4番 バスティー vs 村松。村松選手の表ソフトのバックカットに距離感が合わないバスティー。繋いだボールは一撃の攻撃で狙い撃ってくる村松選手にペースを掴まれ3対0での敗退..
チームも1対3での敗退でした。ダブルスまで回れば、かなりの確率で勝利できただけに正直、痛い敗退でした。
【 ハイライト動画です 】
「最後サーブミスしてボールを蹴ってしまって…。板垣先生に怒られる..」と村松選手は試合を見に来ていた私の子供に言っていたそうです。そんなに怒っているイメージしかないのかなぁ..。ブンデスリーグはマルチボールシステムで、特にコロナ渦の時はボールを触らないように注意されていたので、そこまで気にしなくても良いのに。
試合後、後片付けをしていた時に、ファンクラブのピンポンウルトラの1人が私に話しかけてきました。
「ユキヤはまだ若いよね。ダルコ(ヨルジッジ)やキリアン、ミズキ(及川)の最初の頃を思い出すよ。たくさん練習して、それを試合で発揮しようとするのはわかるけど、私たちファンが見たいのは選手が勝った瞬間。チームが勝った瞬間なんだよね。凄いボールが入っても1点。相手がミスをしても1点。それが卓球さ。ユキヤが卓球のプロフェッショナルというものが何なのかが分かった時、彼は大爆発するだろうね。素晴らしい才能を持っているからね」と。
目の肥えた卓球ファンは選手を本物のプロ選手に育てる為に、私にも助言してくれます。
世界ランキング23位、ダブルスランキング1位のユキヤにかかる期待は大きく、本人も肩を落としていましたが、ここは何かを掴ませなければなりません。
次節は前半戦の最終節、アウェーでのムールハオゼン戦。中3日で行われるため選手はデュッセルドルフに戻らず、クニックスホーフェンに残りシェークハンズクラブで練習します。なかなか勝ちきれない宇田選手が立ち直るキッカケは何なのか…模索します。
プレミアムサービスで板垣孝司監督の卓球指導動画が見放題