10日間という長い期間で行われたヨーロッパジュニア選手権からコハルが帰国しました。
このヨーロッパジュニア選手権は毎年ちょうど暑くなってくる7月上旬から中旬に行われます。ドイツでは一般家庭でさえエアコンのある家庭は少ないと思います。ましてや体育館にエアコンは一部しかないと思います。少なくてもここクーニックスフォーヘンではスーパーと肉屋以外にはエアコンが効いている所はありません。今年はポーランドでしたがここでもエアコンがなく練習日と初日、2日目くらいは暑くてしんどかった様子でした。この暑さの中、団体戦、ミックスダブルス、女子ダブルス、シングルスが行われます。団体戦は4シングル1ダブルスの団体戦ですが、最低二人で組むことができます。今回コハルは団体戦イスラエル戦の1試合以外全て前後半のシングルとダブルスに出ました。
フランクフルト空港に迎えに行きましたがコハルは流石に疲労困憊。駐車場まで歩く足取りさえスローでした..
昨年は団体戦の4番手。数試合の出場で団体戦を終了し、シングルスはベスト32、ダブルス準優勝でした。去年はセルビアで行われましたが、コロナのため行けませんでした。今年も残念ながら現地に応援にこそ行けませんでしたが、毎日毎日ライブスコアを追い続けた10日間でした。
団体戦はエースのジョジーが数日前に身内に不幸があり気持ちが充実できないまま試合に出場したため、コハルがエースとして出場しました。準決勝まで単複全勝で決勝戦を迎えました。ここはコハルが踏ん張り抜かなければなりません。また心配したジョジーの両親も決勝戦前に現地入りしてくれ、チームを支えてくれました。
決勝戦はフランス。前半は一番でコハルが勝ちましたが、ジョシーが相手エースに惜敗、全勝だったダブルスも1-3で負けました。チームは1-2の崖っぷちに。4番のエース対決ではコハルが過去に1度も勝利したことのない選手でしたが僅差で勝利。ラストはジョジー。しかし第1ゲーム1対8と苦しいスタートに..。ここから今まで「自分で点を取りに行って失点を重ねていた」ジョジーが「我慢のプレー」にチェンジ。なんと12対10で逆転し、第2ゲームも11対9。自信を取り戻したジョジーが決勝点を挙げ劇的な団体優勝に輝きました。
コートに立ったジョジーとコハルの頑張りはもちろんですが、1歳年上のリサと2歳年上のロレーナも1球ごとに立ち上がり、苦しい場面でも応援をしてくれたのが本当に感動的でした。
またチームを率いたシー・ショップ コーチはオリンピックでドイツ女子団体をメダル獲得に導いた名コーチです。彼女の経験が選手達を金メダルに導いてくれたのは言うまでもありません。
最もメダルの欲しかったシングルス。ベスト32から7セットマッチが体力を消耗させますが、なんとか準々決勝に進出。メダル決定戦の相手は団体戦準決勝で3対0で勝利していたチェコの選手でした。過去のWTTでも勝利していました。ゲームカウント3対1とリード。しかしここから追いつかれ最終ゲームに突入。最終ゲーム8対4、9対7とリードしていましたが9対11で敗退…
今まで経験したことのない悔しさと疲労だったことでしょう。
「帰りのホテルへのバスでコハルと一緒になったので、最終日のダブルスへの心構えを伝えておきました」
現地で観戦してくれた梅村さんから連絡をいただきました。
最終日。なんとか気持ちを入れ替えて臨んだ女子ダブルス決勝戦。相手は団体戦で敗退していたフランスペアでしたが、完璧な試合内容で3対0で勝利。2個目の金メダルを獲得しました。
「1発勝負の選手権大会で三冠王を取るためには、自分の実力とライバルの実力を80対20まで差をつけておくこと。自分が70、ライバルが30では、自分の調子が上がらずライバルがファインプレーをしてきた場合、負ける可能性がある。心技体知の総合力でライバルに差をつけて試合に挑むことが大切。80対20なら僅差で逃げ切ることができる」
青森山田前監督の吉田先生が選手たちに指導していた言葉です。そして、
「苦しい場面で強い気持ちを持って技術を発揮するためには、心の強さが必要。ただ体力が切れたら心の強さは発揮できない。三冠王に必要なのは体力!」
まさにコハルとチェコの選手の準々決勝を物語っていたと思います。
青森山田では、インターハイ前は練習時間をどんどん少なくしていました。でも狙っていた選手は長距離ランニングを自らに課していました
団体とダブルスで金メダルを獲得したコハルでしたが、最も欲しかったシングルスのメダルは来年への宿題となってしまいました。
心技体知。全てを兼ね揃えたアスリートになるまで、まだまだ試練の道のりが待っているようです。
自宅に帰り妻が作ってくれた夕飯を美味しそうに沢山食べるコハルを見ることができて「再スタートだな」と思いました。
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