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板垣孝司ブログ
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ドイツ1部監督。青森山田前監督

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板垣孝司の全レシーブ克服
板垣孝司の全レシーブ克服
元青森山田学園卓球部監督、現ドイツプロリーグ1部チームのヘッドコーチ。初心者からトップ選手、ジュニア選手に有効な練習方法まで色々なテクニックを紹介します。
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2024年1月7日 22:08 公開

【 家族と共に海を渡った逆襲の30s 】Jin Ueda が衝撃のブンデスリーグデビュー

【 家族と共に海を渡った逆襲の30s 】Jin Ueda が衝撃のブンデスリーグデビュー

ブンデスリーグのヘッドコーチとして8シーズン目を迎えました。緊迫した場面では「ドキドキ」してしまうものの、試合前はできるだけリラックスして会場に入るようにしています。

【 家族と共に海を渡った逆襲の30s 】Jin Ueda のデビュー戦もいつも通りリラックスして。そう心に決めていました。私が過緊張してはJinにも影響があるだろうと..

午前中の練習が終わり自宅に戻り、少しの睡眠。いつものルーティーン。

Jinが10年前の青森大学4年生の全日本選手権で準決勝に進出した時のベンチコーチをどうやったのか..

数年前に「ラケットを持たないで家族と一緒にドイツに遊びに来たら?」と声をかけ、その時のホームゲームがブレーメン戦だったこと..

私が青森山田に勤務していた終盤の年、1人で中学・高校・大学の練習を監督していましたが、どうしても1人では手が回らず、当時大学生だったJinが力を貸してくれたこと。そしてその恩をいつか返さなければならないと心に決めていたこと..

試合2日前に「デビュー戦は記憶に残る試合になるのは間違いないけど、卓球のルールは同じ。気負い過ぎず準備しましょう」とJinに伝えていました。それなのに

「マジか.. 全く眠れない..」私がガチガチ..

あっという間にホールに出発する時間になっていました。

「この試合は1番(エース)がJin」選手と相談し迷いなく決めました。
「Jinにはプレッシャーが有り過ぎるのではないか?」とマネージャーからアドバイスをもらいましたが
「いやいや、それをも乗り越えるために家族と共に海を渡ってきたんだから」

対するブレーメンには前半戦0対3で敗退しています。前半戦を終え3位につけているブレーメンはエースのファルク(Sweden / WR21位)が圧倒的な勝率を誇り、グラシメンコ(カザフスタン / WR47位)アギーレ(パラグアイ / WR129位)も今シーズンいぶし銀の働きを見せています。

19:00。チケットが売り切れ特設シートを作った満員のシェークハンズアリーナで試合スタート..

1番 Jin vs グラシメンコ。初対戦。私の試合前のアドバイスは「アドバイスはなしで笑。困ったら助けるから笑」
スタートからサーブを目まぐるしく変えながら先手を取るJinスタイルで5対1とリード。少しずつ追いつかれ9対9。
ここは「Jin頑張れ!」と小さく呟くしかない。このゲームが全ての勝負。

11対9!

笑いながらベンチに戻ってくるJin。「どう?」「相手が嫌がってるのが見えますね。余計なことをしなければ大丈夫です!」

第2ゲームを11対7で勝利。第3ゲームはグラシメンコが諦めかけて8対1。「このまま終わるわけがない」少しずつ点差を詰められ嫌な雰囲気になったのを感じ自らタイムアウト。一旦心だけを落ち着かせ1分のタイムアウトすら使い切らずコートに戻るJin。最後は鋭いツッツキレシーブから強烈なフォアドライブをミドルに打ち込みゲームセット!
満員の観客の声援に応えるJinは、私が知っている10年前の青森大学4年生の「上田」ではなく、大学卒業後10年の時を経て、山あり谷ありの多くの経験をし、そして素晴らしく成長している「Jin Ueda」でした。

2番 フィリップ vs ファルク。私がベンチコーチをしていて1度だけファルクに勝利したのがフィリップ。何度も何度も負けて、研究して、「こうやればファルクに勝つチャンスがある」という卓球スタイルを持っているのがフィリップ。3種類のサーブで組み立てる。レシーブのボールの落とす場所。フォア表にはまらない方法。

それでもアドバイス通りに試合が進むはずがありません。ゲームカウント1対1。第3ゲーム9対9で相手にネットインがありゲームカウント1対2。「戦術は全部合っている。あとは心を切らさず、ファルクにスーパーブロックを決められても、とにかく1球でも多くコートにボールを入れるだけ」
11対7、11対6。ゲームカウント3対2で勝利!

3番 バスティー vs アギーレ。前半戦はフルゲームジュースで敗退しています。左利きのアギーレのサーブからの展開に苦戦。第1ゲームを何とか11対9で勝ちベンチへ。「あまり早い打球点でレシーブし過ぎると直接のレシーブミスや4球目のブロックが間に合わないから、難しかったらゆっくりレシーブ。4球目はカウンターを狙い過ぎず1球ブロック。そしてラリーに持ち込んでミスを誘うのはどうだろう?」「有りだと思う。」難しいボールはボールの弾道を高く変えたり、ロビングを混ぜながら得点を重ねるバスティーが11対9で2ゲーム目も取り、第3ゲームは「そこまでロビングを上げすぎなくて良いのに..」と私が思ってしまうほど華麗なロビングを披露。カウンターは得意なもののミスが出てしまうアギーレが完全にペースを乱しゲームカウント3対0で勝利。

マッチカウント3対0で勝利しました!

【ハイライト動画です】

 

2024年 私が立てた目標は「勝っても負けても一喜一憂しない」です。

今日はブンデスリーグ。明日はコハルがベルリンでドイツカップのため、妻と2人で電車でベルリンへ移動。クニックスホーフェン第3チームで毎日指導しているVovaとカズトも試合。アキトはチェコのプラハでの「チャレンジャー」という、アキトにとってはハイレベルな試合に出場中で、試合終了後は1人で電車を乗り継ぎ国境を越え、深夜に帰宅予定です。

選手たちは、どんどん高いレベルに挑戦しているので、ずっと勝ち続けるというのは殆ど有り得ないと思います。

「シーズン中は毎週のように試合が続くため、勝ち負けだけで心を乱さないようにする」

今日、Jinが勝利しチームも3対0で勝利した瞬間、自然に涙が溢れてきました。一喜一憂とは違う感情だったので良しとしました。

(フランクフルトから応援に来てくれた久保田さんが撮影してくれました)

チームを勝利に導いたJinも勿論ですが、本当にホッとしたのは奥様だったと思います。2階観客席で試合を観戦してくれていた奥様と、あおば君、なのはちゃんにセンターコートに来てもらい思い出となる写真を撮りました。

いつもは「コージに抱っこする?」と聞くと「嫌だ。ママ」とドイツに来てから一度も抱っこさせてくれなかった なのはちゃんが、初めて抱っこさせてくれました笑

自宅に帰りカズトと2人だけで夕食。

「上田さんの試合を見てどうだった?」と聞くと
「どう表現したら良いかわからないけど、1球1球のボールの質もそうだけど、何か1球1球の重みが違うような…」
「そうだよね。それが上田 仁なんだよ。カズトが卓球を頑張るなら勝ち負けも大切だけど、上田さんのようなプレーヤーを目指して欲しいよね」

「パパ、以前パパのインタビューを読んだ時に、上田さんには足りないものが一つだけあるって言ってたけど、あれって何なの?誰かに話しした?」

「平岡さんにだけは伝えたけど、ママにも言っていないよ。」

「それって何なの?技術?戦術?」

「違うよ。どっちでもない」

「Jinにたった一つだけ足りなかったものは、自分の卓球人生を楽しむことだよ」

「今、ドイツに来てJinは楽しんでる。今まで見えていなかったものも見え始めている。これが答えだよ」

これからも対戦相手がどんどん強くなり、プレッシャーもかかり、勝ちもありますが負けも出てくるかもしれません。でも大切なのはその勝敗を全て受け入れ、次のコートに立つ自分自身を楽しむことです。

42歳の鉄人、シュテガー・バスチャンのように。

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