最も恐れたのは、ここまで「初のプレーオフ進出か?」と話題になりながら最後の2試合のホームマッチで敗退し大逆転を喰らうことでした。
プレーオフ進出を期待してくれている、満員のシェークハンズアリーナのお客さんの歓声が落胆のため息に変わる..
想像しただけでも、このプレッシャーは想像以上でした..
この頃から私の点数計算が始まりました。
勝つ事ではなく、負けても逃げ切る事が頭から離れませんでした。
ムールハオゼンが最後にオール3対0で3連勝した場合は、最終的に勝ち点1になる..
カナックがプレーし始めたベイグノイシュタッドは残り試合は全勝するだろう..
4月20日に行われたムールハオゼンとの直接対決は「2対3で負ければプレーオフがほぼ確定」でした。が1対2での4番、バスティーがフルゲーム9点で敗退し結果1対3でした。
後でJinが教えてくれました。「廊下でアップしている時にバスティーが、ここ勝ったらプレーオフだよな。いやいや、まずは試合に集中」と言っていましたと。
この試合の敗因は分かっていました。私が点数計算ばかりをし、チームが勝つために自信を持ったオーダーを出せず、余計に選手へのプレッッシャーをかけたからです。正直、私も選手入場時点から手が震えていました。だから負けたのだと思います。
青森山田時代、ある年の高校選抜青森県予選を思い出しました。
結果的にこの年度は吉田安夫先生がチームを率いて東北選抜と全国選抜で優勝しましたが、県予選を任された私はプレッシャーの余り「相手は思い切って向かってくる。この相手はこう、この相手はこう..」自分が分析した事を事細かに選手に伝えました。
結果2位通過。3位になったチームとも3対2の大接戦.. 下手をしていたら県予選落ちでした。
「余計な事は言わず、俺たちの方が強いんだ!負けるはずがないんだ!と選手自身が思えるくらい、自分の選手に自信を持たせることが大切なんだ。板垣、見ていろ。全く同じメンバーで俺が全国優勝させてみせるから」
そう教えてくださった吉田先生は、何事もなかったように全国選抜で優勝しました。
残りは最終戦のマインツ戦のみ。先にブレーメンがプレーオフ進出を確定させたため、クニックスホーフェンとムールハオゼンのどちらかのみが残りの1枠を掴めます。
マインツ戦でキーポイントになるのはアンチスピンラバー遣いのムラデノビッチ。名だたる世界のトッププレーヤーがアンチにハマり敗退しています。バスティー、フィリップは対戦したことがあり、予想以上のボールの変化に対応できるものの、Jinは対戦したことがない。
「プレーオフに向けて神様の前髪を掴んでください」と日本の高樹ミナさんからのアドバイスを思い出し、全く同じアンチスピンラバーを使う2部リーグの選手に練習してもらうために300キロ離れたホーフェンシュタインにJinと行き練習をしました。
「もうこれでやるべきことは全てやった。あとは選手と、そして自分を信じよう」
自分の肝も座り始めました。北九州インターハイの決勝で負けた翌年の、甲府インターハイ学校対抗決勝の前夜を思い出しました。
「自分たちの方が強い。絶対負けない」
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