『越世紀合宿と目を手に入れる』
(写真は、前世紀のある日「バタフライ道場」にて。)
私が現役選手であった埼玉県熊谷商業高校時代。中央大学時代。当時、平岡さんはバタフライの道場主任という立場でたくさんの選手の指導にあたられていました。海外からのプレーヤーも数多くバタフライ道場を訪れ、伝統ある「日本の卓球」を学んでいったと聞いています。私も何度も指導していただきました。高校時代・両面表ソフトという戦型だった私を「ラッコ打法」と命名して下さったのは言うまでもありません(泣。)(今は裏裏でチキータの感覚・カウンタードライブもバッチリです!!!)
現役選手生活を終え、山形県米沢市にある米沢中央高校で指導者としての道を歩み始めた時「何をどうやってどのように」指導すれば良いか。勝たせてあげられるようになるのか。全くの素人だった私は平岡さんを請い、7年間「指導方法」を学ばせていただきました。幸いにも米沢市からバタフライ道場までは車で5時間程度。選手を後部座席に乗せては毎月2回、道場に通い続けました。現・山口県野田学園高校の橋津先生は当時、兵庫県東洋大姫路高校で指導されていて、2人で一緒に「平岡さんの下で」学ばさせていただいたことも数え切れないほどありました。
20世紀から21世紀に入る大晦日。一大イベントはバタフライ道場で過ごしました。名づけて『越世紀合宿。』100年に一度のBIG DAYです。
「22世紀もここで越世紀合宿をやろう!」と不可能な命題に、訳も分からず勝手に盛り上がった日を懐かしく思います。(私は先に潰れてしまい、最も大切なカウントダウンの「越世紀の瞬間」に爆睡してしまったらしく、今でも橋津先生に笑われています(泣)。)
(ミーティングのスタートは原点の「八剣伝・南阿佐ヶ谷店」から!)
平岡さんの目は「特殊な目」だと思っています。漫画「ナルト」の「写輪眼」いや「輪廻眼」という表現でも良いでしょうか。平岡さんは「開眼」しているとしか思えません。私が見えない「体の動き」まで見えてしまいます。私は英語はわかるので自然に耳に入ってきますが、他のヨーロッパの言葉は耳にすら入ってきません。そんな感覚で、最初は平岡さんの見えているものが私の目には入ってきませんでした。
「平岡さん、何で見えるんですか?僕には見えません。何で見えるように(開眼する?)なったんですか?」その当時、私は質問しました。
「バタフライに勤めた当初は大会のビデオの撮影をしていて、寝ないで卓球のビデオを見ていた。その後、元世界チャンピオンの伊藤繁雄さん、(故)長谷川信彦さんと全国各地で講習会をした。何度も何度もビデオを見て、そして何度も何度も講習会で世界チャンピオンの体の動きを見た。夢にまで出てきた。そしたらある日突然閃いた。選手は自分の技術の「コツ」を言葉で話しをする。それは大切なことだけど、「コツ」はその選手のもの。卓球には上手くプレーできている選手共通の「原理原則論」があることを。卓球というスポーツの「特性」の部分と、全てのスポーツでの共通の「体の動き」がある。それが手に取るように見えるようになった。」
その日から、平岡さんと同じ目を手に入れるよう、選手指導の時は平岡さんの隣に立って学びました。
「ほら、今のは○○が正しく動いていないじゃないか!」平岡さんが選手に声をかけますが、私には選手の動きが目に入らない日が続きました。「今の、選手はどう動いていましたか?」「こうだろ?!」幾度となく繰り返す、しつこい質問にも付き合ってくださいました。
何年かバタフライ道場に通わせていただき、とうとう「見えた~!」。平岡さんが選手に指導した瞬間に、自分の目にも同じ映像が入ってきました。「良し!」
こうしているうちに、平岡さんは数々の全日本チャンピオンを輩出した「明治大学監督」に。橋津先生は後に全国優勝を成し遂げる「仙台育英学園」に。常勝チームを指揮することになりました。私も縁あってその当時日本一であった「青森山田学園」で吉田総監督の元で働くこととなりました。
その後、いくつもの県のアドバイザーに就任された平岡さんは、現在、山口県の橋津監督率いる野田学園の指導にあたられています。この橋津監督+平岡さん指導には、ご存じの通り、青森山田学園の日本一を何度となく阻まれました。インターハイ学校対抗決勝では2度敗退(仙台育英時)。全日本ジュニアは吉村和弘選手(当時野田学園高校2年)に青森山田10年連続優勝を11年目にして止められました。そして吉村真晴選手(当時野田学園高校3年)には「高校生全日本champion」を達成されました。吉村真晴選手(現愛知工業大学4年)は2016リオデジャネイロオリンピック日本代表を獲得しました。
平岡さんは私の師匠であり、色んな事を相談させていただいていますが、「勝負」の時は私どもの最大のライバル校の側になります。ライバル=切磋琢磨する存在はレベルアップをするために最も大切な事だと体験することができました。この厳しいライバル関係が、ひいては日本の卓球のレベルアップに繋がっていると自負しております。(後編「座右の銘」につづく)
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