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板垣孝司ブログ
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ドイツ1部監督。青森山田前監督

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板垣孝司の全レシーブ克服
板垣孝司の全レシーブ克服
元青森山田学園卓球部監督、現ドイツプロリーグ1部チームのヘッドコーチ。初心者からトップ選手、ジュニア選手に有効な練習方法まで色々なテクニックを紹介します。
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2024年6月19日 4:28 公開

【2024 全ドイツ卓球選手権】コハルがミックスダブルスで優勝。ドイツ卓球史上最年少優勝記録(14歳と141日)を37年ぶりに更新!

【2024 全ドイツ卓球選手権】コハルがミックスダブルスで優勝。ドイツ卓球史上最年少優勝記録(14歳と141日)を37年ぶりに更新!

6月13日(木)〜16日(日)までエアフートで行われた全ドイツ卓球選手権で、コハルがミックスダブルスで優勝しました。試合終了後に教えていただいたのですが、14歳と141日での優勝は、この全ドイツ卓球選手権でドイツ卓球史上男女の中でも最年少優勝記録を更新したそうです(1987年にニコール・シュトラーゼが15歳9ヶ月で優勝した記録を37年ぶりに更新しました)。

会場となったエアフート・メッセ(展示場)

外にも沢山の催し物が出ていました。

もちろん全日本卓球選手権とは異なり、トップ選手全員が出場しているわけではありませんが「歴史を塗り替える」ところを目の当たりにでき、親としては嬉しかったです。

全ドイツ選手権は、昨年までアンダ−15、アンダ−19、シニアの部が別々の日程で行われていましたが、今年は「TT Final 2024」と題し、同じ会場で競技日程をずらしながら行われました。会場に多くの観客を迎え入れた大会は素晴らしかったですが、年下の選手がアンダ−15、アンダ−19、シニアの部を掛け持ちして出場する場合、食事を食べる時間もなく続く試合日程は非常に過酷でした。アンダ−19で活躍しシニアでもプレーした選手は4日間で30試合くらい試合をしたそうです。

6月2日(日)にWTTベルリン大会から帰宅したコハルは6月5日(水)に体調不良になり全ドイツ出発の12日(水)までの一週間ずっとベットで安静にしていました。2度医者に行きましたが診断結果は単なる風邪。全く練習もしていなく体力も落ちているので全種目棄権を考えましたが「15歳のシングルスのタイトルだけは取りたい」というコハルの意見を尊重し、先(13日〜14日)に行われるアンダー19は診断書を提出し全種目棄権。

会場のエアフートまでは車で1時間。私はアキトとカズトを乗せて車で移動しましたが、2人にコハルの風邪をうつす訳にはいかないと、コハルと妻は電車で移動。宿泊もバイエルン州チームのホテルではなく、妻が応援するために予約したアパートにコハルと2人で宿泊し、コハルの体調が回復するのを待ちました。

少しずつ顔色も良くなって回復してきたコハルは、会場で練習を再開しました。「疲れる〜」を連呼していましたが、アンダー15のシングルスと女子ダブルス、シニアのシングルスと女子ダブルスには出場する事を決めました。が「シニアのミックスはできれば棄権したい…」と

コハルは個人得点の関係でほとんどがシードで予選リーグは免除で15日からスタート。試合は女子ダブルスからプレイしました。ダブルス種目はラリー回数も少なく、パートナーにボールを回せるので何とかなっていましたが、シングルスは厳しそうでした。ラリーが続けば続くほどラケットが振れなくなるのは見ていて分かりました。シニアの女子シングルスは1回戦敗退。シニア女子ダブルスは昨年度、銀メダルでしたが今年はベスト8でストップ。

その後、「あと30分後にミックスダブルスの組み合わせがあるけど出場する?」と事務局から連絡が入り、コハルは妻に寄ってきて相談したそうです。妻はコハルが出たくない雰囲気をだしていたので、ダニエルに自分では断れないから言ってきたと察知し、「自分で判断しなさい」とコハルに伝えたそうです。そこにパートナーであるダニエル・リンダラーが通りかかり返事を求められイエスと答えている様子でした。妻の元に戻ってきたコハルは「ダニに断れない」という理由で出場することにしたそうです。これが運命を変える決断になるとは予想もしていませんでした笑

あれよこれよと勝ち上がり、ミックスダブルス準決勝はアンダー19のチャンピオンペアーでした。私も何度も試合を見ているので事前にダニエル、コハルとも戦術の確認をし、3対0での勝利。一方のミックスダブルス決勝の相手はマイスナー(ザーリュブリュッケン)とワン(ドイツナショナルチーム)に決まりました。現在まで全ドイツ選手権ミックスダブルス二連覇中のペアーには流石に実力的に厳しい。せっかく決勝まで来たのだからどこかに勝利への糸口がないかな?と両選手の試合をずっと見ながら戦い方のポイントを考えていました。

続いて行われたアンダー15女子ダブルス準決勝。ゲームカウント0対2、第3ゲームも2対7と絶体絶命のピンチからパートナーのジョジーと声をかけ合い気持ちが復活して大逆転勝利。

その5分後にスタートしたアンダー15シングルス準決勝は2対4での敗退。今まで20回以上対戦し1度も敗退した事がなかった相手ですが、試合後半に立て直す体力は残っていませんでした。敗戦に涙し心を立て直す間もないまま、10分後にミックス決勝が行われることを言われました。一番勝ちたかった試合で負けましたが、残るはミックスダブルス決勝とアンダー15女子ダブルス決勝です。

決勝戦はワンのしゃがみ込みサーブからのマイスナーの3球目攻撃のパターン、マイスナーの強烈なチキータレシーブをどう外すか。フォア表のワンに対するサーブ。この3つがキーポイントになるのが分かっていました。シングルスで敗戦したばかりのコハルに戦術の話をしても頭に入らないだろうと諦め、ここはダニエルに戦術を伝え、後はコハルを励ましてもらうしかありません。

第1ゲームスタート。思った通り以上の展開になり予想を覆し11対7で勝利。
第2ゲーム。案の定コハルがしゃがみ込みサーブに対応できず、8対11で敗退。コハルのレシーブでの展開での失点が4失点。ここがポイント。
第3ゲーム。第1ゲームと同じ展開ながら中盤までリードを許す展開に。ここでコハルが出したワンへのサーブが打ち合わせ通りのサーブで得点。ここから一気に連続ポイントを取り11対8で勝利。ゲームカウント2対1とリード。
第4ゲーム。コハルのレシーブが勝敗への鍵となるため、ゲーム開始のアナウンスが終わり会場が静かになった瞬間に、観客席から日本語で叫びました。

「コハル!レシーブはバックで打っていくの!」

コハルのレシーブでゲームスタート。全く打っていけず0対2。しかしお互いに粘って6対6。再びコハルのレシーブ。タオルボックスで汗を拭くコハルにもう一度

「コハル!レシーブはバックで打っていくの!」

バックハンドでストレートに打ったボールがマイスナーのフォアサイドを抜け、相手がタイムアウト…
7対6、7対7, 8対7, 8対8と点差が開かず、コハルの3球目のターン..
「全面にストップかコハルのフォアに払ってくれないかな」
ワンがコハルのフォアにフリック。コハルがフォアストレートにぶち抜き9対8..

「もう一回払ってくれ」

次もワンがコハルのフォアにフリックし、コハルがフォアストレートを再度ぶち抜き10対8。マッチポイント!
【映像はあまり鮮明ではありません】


来年以降も決勝戦に進出できる保証もなかったので、一発勝負での優勝に大声を出してしまいました。


心の折れそうなコハルを支えてくれたダニと、ベンチに入ってくれたコーネルには本当に感謝しかありません。

【映像はあまり鮮明ではありません】


肩の力が抜けたジョジーとのアンダー15ダブルス決勝は、現ヨーロッパチャンピオンの実力を発揮し優勝する事ができました。

ジュニア種目は小さめのアリーナの赤マット、シニア部門は大きなアリーナにもかかわらず最大5コートの黒マット。マットが違えばシューズの滑りも変わってきますし、ボールのバウンドも若干変わります。休む間もなく2箇所の会場を行ったり来たり。大変なのはわかりますがヨーロッパユース、世界ユースなど上を目指すなら、これくらい対応しなさいと言い続けました。どんな環境でも勝ち上がることが大事です。

試合と試合の合間にコハルには協会の人や州のコーチや事務局の人が「次は何分後に○○の試合が別アリーナであります」と言ってついて歩いてました。親ですら体調を聞く隙も与えてもらえませんでした。

全ての種目で結果を残せたわけではありませんが、将来に向けて大きな経験を積むことができたと思います。


アンダ−19に出場したアキトにとってはジュニア種目は最後の年になりました。予選1回戦から最終ゲーム1対5から逆転勝ちなど、試合で勝ちたくなればなるほど力んでしまい「頑張ること」だけで得点を取ろうとしてしまう所の修正までは届きませんでした。それでも準々決勝まで進出しましたが、メダル決定戦では2対4で敗退しました。これでTOP48, TOP24, TOP12に続き今年4回目のベスト8でした。2005年生まれの選手達がモチベーションを維持できず、どんどんドロップアウトし、逆にベスト4の選手達は学校も卒業しナショナルチームの選手としてプロフェッショナルな生活しています。その選手達の中で本人曰く「根性だけ」でベスト8をキープできたことは評価できると思います。これからは大人の試合。体を動かし「頑張った」という自己満足感だけでなく「勝つための思想。勝ち脳」を鍛えていかないと今まで以上に厳しい世界になると思います。
19歳組は最後の試合ということで、終わった後はいつもよりフランクに話しをしたそうです。「俺と試合するとき何狙ってた?」「これからはどうするの?」など、たわいもない話だったらしいですけど..

やはり今まではライバルとして意識せざるをえない状況でしたので、少し打ち解けているようです。

また、アキトにとってはびっくりすることもありました。金曜日で全日程を終了し、土曜日に電車で帰宅する予定だったのですが、階段を歩いているときに後ろから「アキト!」と呼ばれ、振り向いたらドイツ若手ホープのカイ・シュテュンパー選手。会話もしたことのない選手から突然声をかけられ、それだけでもびっくりしていたら練習相手を頼まれたそうです。土曜日と日曜日、カイ選手だけでなく、次から次へと何人ものトップ選手に練習相手を頼まれて10時間くらいひたすら練習していました。私が覗きに行ったときはカイ選手とアキトが練習している横で、男子シングルス準決勝に向けて、デュダ選手がお兄さんと練習していました。トップ選手に囲まれ、尚且つ、質の高いボールに対してミスをしてはいけないというプレッシャー。その夜はクタクタで妻が宿泊しているアパートに帰宅後、秒で寝落ちたそうです。


平岡さんより基礎技術の大切さを学び、チェコでのWTTでは大崩れはなかったのですが、この大会でカズトは本番で張り切りすぎで空回り。熱くなればなるほど基礎技術が崩れていく。つまり基礎力の低さを露呈してしまいました。心が折れそうになったり、どんなシチュエーションに追い込まれても崩れない「基礎力」がカズトに今一番必要だと痛感させられた大会でした。

帰り道車のラジオで「コハル イタガキが全ドイツ選手権でミックスダブルス優勝しました。14歳141日は最年少記録を更新しました」と偶然流れ「カズトの個人情報も漏れなくバレるね」と言ったところ「みんな双子だと思ってないよ。2分差で生まれたのに、2歳くらい年下だと思われてるんだよ」と言ってました。試合中冷静なコハルと絶叫するカズトは真逆な性格なので双子と言うといまだに驚かれます。。。

これで夏休み前の大きな大会はコハルのヨーロッパユース選手権のみとなりました。

平岡さんに指導していただいた「基礎力」と「勝つ選手の脳」

どんなに苦しい場面でも最後に頼れるのは「基礎力の高さ」

試合のあるコハルはもちろん、他の選手も「基礎力のレベルアップ」をテーマに練習に励みたいと思います。

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